高視聴率:韓国歴史ドラマ「太祖王建(テジョワンゴン)」の後百済の建国者:甄萱(キョン・フォン)の出自と日本神話「三輪山伝説」の関連と本質。処女の懐妊に見る古代の世界!

日本の中の韓国
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1.はじめに

今日は日本の中の韓国と題してお話をすすめます。

日本の『古事記』崇神天皇の巻に「三輪山伝説」というものがあります。これは、後にも紹介しますが、活玉依昆売(いくたまよりびめ)が蛇と交わり懐妊するというものです。三輪山を御神体とする背景から作られた伝説となります。一方これによく似た話が、韓国の神話にも垣間見えるのです。『三国遺事』の後百済の甄萱(キョン・フォン)にある娘が知らず知らずのうちに懐妊して、後百済の建国者、甄萱(キョン・ウォン)を生むという話しです。後百済の甄萱(キョン・ウォン)に関しては大河ドラマ「太祖王建」で知っている人も多いと思われます。

2.後百済の甄萱(キョン・ウォン)の時代背景

新羅が三国を統一後。

衰退した新羅では王位剥奪合戦が繰り返され、豪族や民衆が反乱を起こし、貴族は独自に勢力を保持していた。

農民出身であり西南海で軍功を立てて頭角を現したキョンフォンは、百済の領土だった土地に後百済を建国する。

一方、高句麗だった地では僧侶であたクンイェがそのカリスマ性を武器に民衆の心を掴み、勢力を強めていた。

しかし、クンイェは次第に権力に固執して暴政を振るうようになる。

それを見かねた王建は反旗を翻し、自ら王となって高麗を建国する。

王建は新羅との合併を果たし、キョンフォン率いる後百済との長い戦いに勝利して半島再統一の偉業を成し遂げる。

今日はこの二つを比べてみて、相違点と共通点を探ってみたいと思います。

それでは、まず韓国の説話である、『三国遺事』の後百済の甄萱(キョン・フォン)の誕生神話から見てみましょう。

3.『三国遺事』の後百済の甄萱(キョン・フォン)の誕生神話

光州という北村にある父と娘が住んでいました。あるときその娘に夜ごと訪れる赤色を帯びた紫色の男が現れる。彼は毎晩やってきては、早朝には消えていってしまうのである。

最初はこのことを秘密にしていたが、娘はたまりかねて、父親に報告をする。父はその話しを聞いてとても驚き、「化け物かそれともほんとの人なのか」疑いをもつようになる。

そして

「今夜来たら、その得体のしれない者の裾(すそ)に糸の通った針をさして、どこに逃げていくか、探ってみよう」

と娘にはなした。娘は父の言う通り、その得体のしれない者の裾に針を通しておいて、どこに向かっていくかを確かめた。すると、それは垣根のところで止まっていて、みると、大きなミミズであったというのである。

そののち、娘は懐妊して子供を産んだ。ある時虎がきて、彼に乳をのませたという逸話もでてきた。子供はとても姿が立派で、村の大将に抜擢されるという。彼が後百済の建国者、甄萱(キョン・ウォン)である。

次に日本の神話を見てみましょう。

4.三輪山伝説

時は崇神天皇の御代です。この時代悪性の流行病が流行る。崇神天皇はこれを何とか解決したいと思っていた。そんなあるとき夢にオオミワの神(またの名を大物主神とも)が現れ、大田田根子(オオタタネコ)に私を祭らせなさい」という。そこで、全国に使者を派遣し、この大田田根子を探すこととなる。

ようやく大田田根子を探しあて、話しを聞くと、彼は自分の出自をこう語る。

「母は活玉依昆売(いくたまよりびめ)で、彼女は毎晩不思議な人が訪れるという。彼女は妊娠した。父母はまだ結婚もしていないのに懐妊することを疑い、どうしてひとりでに妊娠したのかを尋ねる。すると

「自分も知らない人が毎晩きて、同棲しているうちに身ごもりました」と打ち明ける。

そこで、赤土を床の前に散らし、糸巻の紡いだ麻糸を針に通して、その男の着物の裾にさしなさいと命ずる。朝その糸をたどってみると、三輪山に続いて、大神(おおみわ)神社で終わっていた。

それを聞いた天皇は彼が神の子孫であることを知り、その土地を三輪と名付けた。

ある資料によると、この説話は三輪の神は蛇神からきているといいます。現に大神神社は蛇神を祭っています。『日本書紀』ではこおろち(小蛇)と記録されています。

蛇神と巫女的女性との婚姻関係をモチーフとする説話で、一般に『蛇婿入り型』昔話として日本全国に分布しています。

5.日本神話と韓国の神話の比較

まず、この二つの共通点をみてみると、

第一に、知らずしらずのうちに身ごもるということが挙げられます。かなり共通していることがわかります。私も最初『三国遺事』の話しを読んだとき、驚きました。これほど似通っているのはどうしてか。

第二に、その存在が、人ではなく、ミミズ、小蛇というところです。異なる存在ではありますが、細長い動物という点では似ていますね。韓国ではたしかに蛇を見かけません。ミミズはいますが。

第三に、その存在に糸や針を裾につけるという点でしょう。糸や針に何を意味するのか、もし知っている人がいたら教えてください。絹織りものと関係があるのでしょうか。

最後に、これは共通しているというよりは、色という観点から考えて、キョンウォンの時は、赤色を帯びた紫の服を着ていた。大田田根子の場合は赤土を床に散らす、という内容でした。ここにも色づかいに赤という共通を見出されます。「赤」は何か邪悪なものを防ぐということがありそうです。

次に相違点ですが、私なりに見た感想では、

懐妊した娘の行動です。キョンウォンでは父に報告するとあります。大田田根子の場合は娘が両親から問い詰められるというシーンです。韓国の説話はどこか積極的であり、日本の説話はどこか消極的であります。

また、韓国ではその化身は垣根にいたとありますが、日本は山に続いていくのであります。やはり日本は山自体が聖なるものという認識があるのでしょう。

6.懐妊にみる世界観

この二つの内容から、神秘的に身ごもるものから、立派な血統、家系が現れるということが伺ることができます。きっと、その地域(キョウォンではワンサンジュ:現在チョンジュ、大田田根子では三輪山を祭る地域)の豪族が関係しているようです。

その豪族と何らなかの血縁関係を結ぶことで、強力な勢力を取り入れることができるということであったのかもしれません。

実際にその豪族の男が娘の家に通う(通い婚)をしていたということもありうるでしょう。男性が夜中に女性の家に通う風習があったことも明らかになっています。そういった背景があるとも思われます。

しかし、ここで、一番印象的なのは、知らず知らずのうちに懐妊するということではないでしょうか。これは、新約聖書のマリアの精霊による受胎の話しを想起させます。マリアの受胎が精霊によって受胎したかどうかは神学に譲るとして、どこの国でも、大いなる存在が誕生する経緯といしてこのようなモチーフが用いられるのはおもしろいです。イエスの誕生から推測すると、処女が懐妊することはどこか、新しい穢れのない誕生という意味あいがあるのでしょうか。

 日本の神話と比較することで、また新たに日本を発見できることは興味深いものです。今日はこの日韓の神話について比較してみました。

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