日本神話のクライマックスといっていい箇所、天孫降臨。これはアマテラスの子孫であるニニギノミコト(邇邇芸命・瓊瓊杵尊)が天空(高天原)から葦原の中つ国に降臨するという一連の内容である。どこに降臨するのか。
筑紫の高千穂のくしふるの峯に降臨したという。
これは諸説があり、宮崎とも鹿児島ともいわれる。
問題は、この場所を選んだ理由として、韓国(からくに)に向かっているから、とても良い地であるというのである。この地に宮殿を造営するのである。
「韓国」つまりからくにとはどこなのか。
ほとんどの解説書には、「朝鮮半島」と記載されている。国学者の本居宣長(1730~1801)は、日本書紀を参考にしつつ、「空虚国の意味」として解釈していた。
ただし、どうして空虚なのかという意味をこの前後の解釈から説明はしているのだが、とにかく、彼は、空虚という意味に解したのである。
「カラ」というオトを解するにはそう簡単には結論しづらいものがある。なぜならば、カラを意味するものに、様々な意味あいをもたせているからである。
私たちに身近なものでは、空手がある。空手はあの格闘技のものと同時に、何ももっていない手という意味もある。つまり、何もないということが「カラ」の意味としてまずあげられる。
次に、カラは外国一般を意味していた時期がある。日本以外のことを指す場合である。特に主だったものは中国であろう。
実際宣長は漢心(からごころ)と書いて、大和心と対比させた。からごころは、外国の思想にかぶれて汚染された心という意味で使っていた。
よって漢国は異国で、皇国(みくに)は本国、日本とした。
もちろん「万葉集」にもカラが使用されるところがある。
その内カラクニといったばあい、新羅の国をさしている場合が多くあり、その他は、遣唐使のことを詠みつつカラクニといしているところを見ると、「唐の国」なのである。
では、カラクニとしてもっとも近似した発音を持つ国や地域があったのか。ある
それが、加羅である。伽耶ともいい、朝鮮半島の南端にあった諸国連合である。
古事記には韓の漢字を用いる箇所はいつかみいだせる。
そのうち興味深いのは、「韓神。次に、曽富理神」である。曽富理とはそふりと読み、ソウルつまり朝鮮半島では都という意味に使われる。そうるする、やはり韓は朝鮮半島を意味すべきなのかどうか。
本居宣長はこれを文脈をもって解釈しようと試みる。韓国に向かうという向かうの字はもともと「肉」という字だ。そして向かうではなくもともとは「肉」であり、肉のないやせ細ったものという解釈をおこなう。つまり不毛の地ということである。日本書紀には「膂宍空虚地」となっている。これは空しい土地という意味である。
カラをどのように解釈するか。これは国という意味を考えると朝鮮全体を考えていいのかもしれないが、もし土地や地域という意味であるならば、ある一定の地域ではないであろうか。
最後のクライマックスになぜ「韓国(からくに)」が登場するのか。古事記の謎がある。
宮崎には韓国岳がある。
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